思考力が鈍化してきた背景への仮説 – アセットケア代表 宮田丈裕氏(2/4)

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KOLEIZOSCOPEインタビューの記念すべき第一回は、株式会社アセットケア 代表取締役の宮田丈裕さん、および長年にわたり宮田さんと協働しておられる西野亜希さんにお話をうかがいました。お二人が過去10年以上にわたり関わってこられた人材アセスメントや各種人材開発プログラムの経験から見えてくる本質的な課題とは何か。また、その対応についてはどのような方法がありうるのかについて、語っていただきました。


  1. Chapter 1思考力不足という単純にして重大な課題
  2. Chapter 2:思考力が鈍化してきた背景への仮説
  3. Chapter 3思考力に秀でたハイパフォーマーの共通点
  4. Chapter 4Key Questioner (KQ)のアプローチ

Chapter 2:思考力が鈍化してきた背景への仮説

古森
なぜ、それほどまでに思考力が鈍化してきたのでしょうか。
宮田
統計的優位性をもって断定できるかどうかは別ですが、かなり確度の高い仮説としては、年功序列的な組織マネジメントの負の側面が影を落としているのではないかと思っています。
古森
年功序列的運営の負の側面・・・。
宮田
ある企業で、こんなことがありました。私たちはその時、次世代のシニアマネジメントを選抜するプログラムをお手伝いしていたのですが、最後に経営トップが個人別に面接する機会が設けられていたのです。
古森
そこにお二人は同席されていたわけですね。
宮田
そうです。そしてその経営トップは、「次に●●のシニアマネジメントのポジションにあなたを登用することを考える場合、何がプラスの要素になりますか。3つ聞かせてください。」とたずねたのです。
古森
質問自体は、普遍的なものですね。
宮田
はい。ところが、その問いに対する回答が恐るべき傾向を示したのです。お一人ではありませんよ。なんと、その面談を受けた方々のほとんどの人が、「私には○○年の経験があります」といった趣旨のことをお答えになったのです。使われた言葉や表現は個人差があるのですが、要するに「経験が長い」ということを自分の評価ポイントとしてあげた人が、大多数を占めたのです。
西野
しかも、「3つ挙げて下さい」とたずねているのに、多くの人は1つしかお答えにならなかったのです。
古森
おそらく、いい加減に答えているのではなく、真剣にそのように答えていらっしゃったのでしょうね。
宮田
その通りです。これには、その経営トップの方も頭を抱えてしまいました。これは極端な例かもしれませんが、決して小さくはない、世間的には誰もが知っているような企業での出来事です。
古森
その話と、年功序列的運用の話は、どう結びつきますか。
宮田
年功序列については、先にお断りしておきますけど、悪いことばかりだなんて言うつもりはありませんよ。それは、最初に明言しておきます。ただ、この「思考力」「構想力」の課題に関して言うならば、かなり影響していると見ています。なぜなら、自分で常にゼロから考えて行動する人と、他人が考え出したことを遂行する人とで、リスクとリターンが公平にならないからです。
古森
つまり、リスクテイクが奨励されない組織的素地の中で長く育った人がたくさん出来てしまったと・・・。
宮田
というのが私たちの仮説です。ゼロから物事を考えて、今までにないことを言い出したり始めたりするには、当然リスクも伴うわけです。しかし、リスクを取って考え行動する人と、そうでない人とで処遇にほとんど差がつかないのだとすれば、人間がどちらに向けて動いていくかは推して知るべしでしょう。
古森
もちろん個人差はあるでしょうが、多くの人はリスクよりもリターンのバランスが相対的に他のオプションよりも高い方向に動いていくでしょうね。
宮田
今日では、表だって年功序列運用を堅持しているという企業は少なくなっていますが、むしろ年功序列運用の前提となっていた、こうしたリスク・リターンの関係性が本質的に大きくは変わっていないのではないか、と思います。いや、近年の先進国の不景気のためにさらに深刻化しているかもしれません。

>> Chapter 3:思考力に秀でたハイパフォーマーの共通点