ふと思う系

何か新しいことや正しいことを言っているような気になるために、これまであったものを古くて意味のないものに単純化するという行為を、人間ってよくやりますね。

例えば、「リーダー」と「マネジャー」。ここ数年、リーダーとマネジャーの違いは?とかいう話がわりと流行ってます。要は、良くて素晴らしい要素はリーダーに仕分けして、管理ガチガチでアクションとならい乗っかり型管理職みたいなのをマネジャーという記号に矮小化して並べて対比して、だからリーダーがいいよね、みたいなチープ・ロジックもよく目にします。そういう話は、本質的には何も新しい価値は出てなくて、いいところだけ切り出して架空の箱に入れなおして、だからそっち、みたいな話。虚しいです。

あるいは、「戦略」と「デザイン思考」みたいな対比も。いわく、複雑系で非連続、不確実性の時代。VUCAでぶかぶか。だから戦略なんて意味なくなってきていて、行動&検証しながら作って行くほうが良い、みたいな話。うむむ… 行きたいところに行く、起こしたいことを起こすためにどうすればいいか考え抜いて、そのための方法を選ぶのが「戦略」なわけです。だとすると、わけわかんない時代だから考えすぎないで行動&検証しながら進めることにするよ、という手段を選択することがその人(企業)の「戦略」なわけですね。戦略って、単線的な「計画」のことじゃないですから。

こういう感じの、なんか新しそうに見えるけれども良く見ると本当は考えてない、思考停止の情報をキラキラしたものやスッキリ感のあるものとして位置付けてしまう傾向って、ほんとに怖いなぁと思います。思考停止は蜜の味。こういうのはすぐに広がって行きます。きれいに整えて思考が停止するくらいなら、へんに思考の体系的な整理とかしないで、死ぬ気で胃がよじれるくらい「どうすべきか」を考える方がましです。必死に考え抜いて手段を選びとって実行している人には、「リーダー」とか「戦略」とかいう言葉の定義さえ不要なわけです。戦ってない人が、そういうのに凝る。

【ふと思う系】古森 剛 (著) 単行本
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【ふと思う系】単行本(ソフトカバー)– 2015/12/10

古森 剛 (著), 畑上 照夫 (写真)
単行本(ソフトカバー) 1,968円