サーバーワークスの5つの行動指針 – サーバーワークス代表 大石良氏(5/6)

The Value Talk 第2回 株式会社サーバーワークス 代表取締役 大石良さん

  1. クラウドとの出会い
  2. 東日本大震災とともに訪れた転機
  3. クラウドはITの話ではなく人間の話
  4. クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく
  5. サーバーワークスの5つの行動指針
  6. 自ら実現しながら発信する会社

Chapter 5:サーバーワークスの5つの行動指針

大石
まだ磨きこまれていないのですが、行動規範や価値観を明文化したものはいくつかあります。例えば、端的に言いますと弊社の行動指針は以下の5つのキーワードで表現されます。しかし、これらが日々の活動に十分に根付いているかというと、まだ十分ではありません。まさに今、取り組んでいるところです。

  • スピード
  • 仕組み化
  • 発信
  • チームワーク
  • チャレンジ
古森
最初に来ている、「スピード感」という言葉・・・。決して珍しい日本語ではありませんが、そこに込めた思いはどのようなものですか。

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大石
「スピード感」には、「早く失敗しようぜ」という意味が込められています。失敗したら、振り返り、次に活かせば良いのです。弊社では、失敗しても怒ったり叱責したりはしません。失敗からどう学ぶか。その学びからいかに「仕組化」するかを問いかけるようにしています。
古森
なるほど、単に急ぐという意味ではなく、「スピード感」が学びを通して「仕組化」につながっているわけですね。
大石
先日のマネージャー・ミーティングで、今年3月に予定している引っ越しの後に座席をフリーアドレスにするにあたって、マネージャーの居場所をどうするかを議論しました。一ヶ所にマネージャーを集める、ばらばらに固定する、完全フリーアドレスなど、どれにするかと。まずは、それぞれの選択肢を実際に1か月実行してみてから結論を出そうということになりました。いつまでも理屈で議論をするよりも、「やって判断」をすれば良いということです。やってみることで、組織としてのトータルのスピード感が高まります。小さな例かもしれませんが、こうした部分に弊社の行動指針がにじみ出ていると思います。
古森

どんどん動いて、学ぶというサイクル自体を増やしていくわけですね。単に「スピード感」という言葉を聞いて想像するイメージと、今のようなエピソードとともに伺うのとでは、まったく理解度が違いますね。私が今感じている、「そういうことか!」という感覚を、新しく組織に加わる方々に伝えていけるといいですね。「発信」については、どうですか。


大石
昔は、エンジニアが自分で色々なものを作ることが是とされていたように思います。今は、特にクラウドの世界では、目的にフィットするサービスを良く知っていて、既存の仕組みをいかに組み合わせて提供することができるかという点に大きな価値が出るようになりました。いうなれば、情報をインデックス化する力に付加価値があるのです。
古森
なるほど、情報をインデックス化する力。
大石
例えば、「アンケートをしたい」とお客様がおっしゃった時に、「1,000万円かけて作ります」というのが旧来のアプローチですね。それに対して、「こういう方法を使うとすぐ使えます」と提案するのがクラウドの世界です。それを個人の頭の中ではなく、どんどんアウトプットしてシェアしようということです。アウトプットをすると、よりインプットも入ってきやすくなります。当社でも、ウェブサイトで「技術ブログ」を公開したりしています。それを見て、弊社の「発信」に関する考え方を感じ取って、採用に応募してくる人もいます。アウトプットすることによって情報の濃度が高くなり、結果として無駄な時間も省けるのです。
古森
先に”Give”して、後から”Take”が来る流れですかね。普通なら「そこまで出さなくても」というような情報も、積極的に世の中に出していくということですね。そうすることに、新しい合理性があると。
大石
社内でも、毎週金曜にLT(Lightning talk)大会というものを開催しています。その日の発表者が一人当たり5分間のプレゼンテーションをして「発信」の練習をするのです。これを続けることによって、皆さん劇的に発表がうまくなっていきます。効果を上げるコツは、「素早いフィードバック」です。本人の発表中に、社内チャットでリアルタイムにフィードバックするのです。「トチッた」「体が揺れている」など。それを見ると改善点がすぐに分かり、必ずうまくなります。フィードバックなしに100回喋るよりも、10回喋って10回素早くフィードバックを受けた方が、絶対にうまくなりますね。
古森
ここにも「スピード感」が出ていますね。IT基盤を活かしたリアルタイムフィードバックというのは、素晴らしいと思います。「チームワーク」については、どのような思いを?
大石
「チームワーク」については、実は紆余曲折している面があります。一時期、「チームワーク」という言葉を意図的に言わないようにしていた時代がありました。以前の低成長時代はよく言っていたのですが、結果として「他責志向」が見えてきて、自分自身の能力・技術を伸ばす傾向が弱くなった時期がありました。それで、成長へ向けて会社のモードを変えたときに、個人の能力成長の極大化を志向する方向に振ったのです。「会社を出ても大丈夫なくらいに個人の能力を伸ばせ」と言ってきました。そういう過去の経緯があったのですが、最近はまた「チームワーク」という言葉が必要になってきたと感じています。
古森
経営の局面によって、大事にすべきメッセージの濃淡や解釈も変わることがありますね。
大石
「ピンで動けばよい」というわけではなくなってきたのです。クラウドの場合、社員1人で数百台のサーバーを立ち上げたりします。より個人の力に依存する面もありますので、個人の能力を伸ばすことは依然として非常に重要です。しかし、それと同時にチームとしてお客様にサービスを提供する重要性も増してきました。そこで、もう一度「チームワーク」にスポットライトを当てようとしているのが、まさに今なのです。
古森
経営の次元が上がった証ではないかと思います。「チームワーク」という言葉が使われる組織的背景が変わってきたのですね。最後に挙げられていた「チャレンジ」については、どうですか。
大石
こちらは、込めた思いとしては「スピード感」と同じですね。弊社自体が、創業~成長の過程で色々なクラウドサービスも試してみて、たくさんのラーニングをして、Amazonのクラウドの利点に早く気づき、早く方針決定をして、それを軸に「チャレンジ」することが出来ました。
古森
挙げて頂いた5つのキーワードは、それぞれ別個に分かれているというのではなく、相互につながり合っている印象ですね。
大石
そうですね。この5つの行動指針はいわゆる”MECE”(注:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive:ダブり漏れのない状態)でなく、かぶっていたり、漏れていたりしている要素もあります。例えば、「お客様」について色々な思いを持っていますが、それらには明示的には言及していないわけです。そうした部分も含め、行動指針体系を再定義していこうとしています。東日本大震災時の日赤のエピソードなども、昔からいる人は直接知っていますが、最近入社された方々は、皮膚感覚がないわけです。もっと、経営として伝えることを考えねばなりません。
古森
外部者の私でさえ、このように直接お話を伺えば伝わる部分があります。今後の行動指針体系の再構築に期待しております。最後に、今後の象徴的な取り組みや、社会に向けたメッセージなどを伺えればと思います。

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