経営者のリテラシーとして – インサイトコミュニケーションズ代表 紫垣樹郎氏(5/5)

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KOLEIZOSCOPEインタビュー第2回は、株式会社インサイトコミュニケーションズの代表取締役、紫垣 樹郎さんのお話を伺いました。
紫垣さんとは、以前「伝説の新人」というセミナーで私が講師の一人として協働させて頂いたご縁で交流が始まりました。紫垣さんは、経営・組織人事の課題とクリエイティブ分野の専門性をつなぐことができる数少ないプロフェッショナルです。期待を胸に、虎の門のオフィスに紫垣さんを訪ねました。


  1. クリエイティブとの出会い
  2. 人の心が動くものを
  3. 本質は「相手の反応」にある
  4. グローバル化と企業理念
  5. 経営者のリテラシーとして

5:経営者のリテラシーとして

古森
企業の外に向けた広告宣伝、そして中に向けた価値観コミュニケーション。いずれの場合も、クリエイティブの力をもっと上手に活かしていけるといいですね。
紫垣
多くの企業で改善の余地は大きいと思います。一方、少数派ながら、クリエイティブの本質を理解して外部リソースを有効に活用している企業もあります。それらの企業は、やはり業績も伸びています。
古森
企業側にも、クリエイティブ活用に関するリテラシーのようなものが必要なのでしょうか。
紫垣
その通りです。クリエイティブが人々の心に起こす変化の本質を理解している経営者の方々は、クリエイターを所属企業名では選びません。国内外にサーチの視野を広げ、優れたクリエイターを固有名詞、つまり”By name”で起用します。特に、クリエイティブワークの全体統括をするクリエイティブ・ディレクターの起用に関しては、そうした経営者の方々は直接関与していらっしゃいます。
古森
やはり、そうですか。
紫垣
そして、伝えるべきものを自社内で固めてからクリエイティブワークを「外注」するのではなく、コンセプトの検討段階からクリエイティブ・ディレクターと協働していきます。それにより、「人の心を狙った方向に動かす」という最終目的を最初の段階から堅持した上で、鋭角的な検討が可能となるのです。逆に、固めてしまったものを作業として「外注」されると、川下段階では補正のきかない面も多く、発注側も受注側も苦しむことになります。そして何より、そういう状態で作られたクリエイティブでは、人の心は動かせないのです。
古森
コンセプト検討の初期段階から筋の良いクリエイティブ・ディレクターが関わると、具体的にはどのような変化が起こりますか。
紫垣
「経営者本人の言葉以上に適切な言語化が起きる」ということです。伝えたいことのエッセンスは、もちろん経営者の方々が一番良く知っていらっしゃいます。しかし、経営者の方々が、メッセージを可視化するプロとは限らないわけです。そこで、クリエイティブ・ディレクターが真意を「引き出し」、「言語化する」作業をしていきます。すると、「そうそう、これだよ!」「私は、こういうことが言いたかったんだ!」というブレイクスルーが起きるのです。これは、対外的な広告宣伝でも、対内的な価値観伝達でも同じです。
古森
経営者の代わりをするのではなく、経営者の真意を引き出して言語化・可視化するプロフェッショナル・・・。それが、紫垣さんの目指しておられるクリエイティブ・ディレクターの姿なのですね。
紫垣
クリエイティブ・ディレクターを”By name”で選択することと、コンセプト作りの上流段階から協働することよって、結果が大きく変わるということを、もっと多くの経営者の皆さまに知っていただきたいですね。
古森
経営者の皆さまのクリエイティブ・リテラシーをあげていくような活動が必要かもしれませんね。経営があってクリエイティブがあるのではなく、経営の有機的な一部としてクリエイティブが認識されるべきだということを。
紫垣
そうしたリテラシーを企業社会に広げていくのも、私に与えられたミッションの一つだと思っています。自分が今のような経験や気付きを得られたのも、多分に偶然の産物で、要はラッキーだったからなのです。
古森
ラッキー?
紫垣
駆け出しの頃がちょうどバブル最盛期で、予算をふんだんに使うことができました。また、その後もたくさんの試行錯誤を重ねる機会に恵まれました。機会を生かすためには全力で努力をしましたが、運に恵まれなければそうした努力も意味を持たなかったでしょう。幸運にも身につけることができた能力を生かして、もっと多くの企業の思いが社内外に伝わるように働きかけていかなければならないと思っています。
古森
紫垣さん、熱い思いをお聞かせいただき、ありがとうございました。クリエイティブという仕事の可能性を、あらためてくっきりと思い描くことが出来ました。そして、プロフェッショナルとして明確な軸を持った紫垣さんの生き方そのものに、強く感銘を受けました。ぜひ、その思いを世の中に伝え続けて頂ければと思います。CORESCOのパートナーグループとしても、2015年に何らかの情報発信をして参りましょう!

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[KOLEIZOSCOPEインタビュー] 第2回 株式会社インサイトコミュニケーションズ 代表取締役 紫垣樹郎さん

  1. クリエイティブとの出会い
  2. 人の心が動くものを
  3. 本質は「相手の反応」にある
  4. グローバル化と企業理念
  5. 経営者のリテラシーとして